8-24 最高神の回想

 あんねー、いわゆる「神聖六種族」っていう人たち? の発展は、最初は、上手く行ってたんよねぇー。

 

 みんなこの世界のバラバラの場所で種族が興ってさ。

 見てくれたよね、最初のアレ。

 

 んでぇ。

 最初に大々的に発展しだしたのが、案の定っていうか、チート気味な能力を許した霊宝族の人たちだった訳さぁ。

 必ずしも、発生場所が酷いから大目に見過ぎた訳じゃないよ?

 核になるのが「宝石」だからね、魔力が実体化ような人たちなんだよね。

 寿命が1500年っていうのも、本来だいぶ削ったんだ、本当ならいつまででも生きていられるんだけどね。額の石が摩耗するなり何かで割れてなくなるなりしないと。

 でもそれはまずいんでおよそ1500年で妥協してもらったにゅうー。

 

 ほら、わたいは可愛いから、お願いすれば、おっかないオルストゥーラちゅわんもイチコロ☆

 

 ……なんだ、その目は。

 

 続きっ!!

 

 んで、霊宝族の人たちは、あれよっていう間に、魔力で過酷な環境を従わせて、高度な文明を築いてしまったのね。

 常に環境を克服しなきゃなんないから、結局、ガシガシご無体なものを発明なさった訳よ。

 で、彼らはあれよという間に、ウーズルから他の大陸や諸島にまで進出したのね。

 

 で、出会ったのが他の種族。

 

 他の種族も、それなりに文明は築いてたけど、まあ、流石にレベルが違うっていうものだったのよ。

 

 ……でさ。

 意外に思うかも知れないけど、割とうまくいったのよ、ファーストコンタクトは。

 ほら、基本的に、霊宝族っていい人が多いんだよね。

 他の種族の文明レベルも引き上げるべく、努力してくれたの。

 

 もちろん、その裏には、オルストゥーラちゅわんが、PL(プレイヤー)として世界を発展させるって目的があって、そのためのプレイがあったからなんだけどね。

 

 ……あの頃はさ。

 みんな仲が良かったよ。

 六大神(プレイヤー)のみんなも、その神聖六種族(プレイヤーキャラクター)のみんなも。

 それぞれいる場所は違って立場は違っても、この同じ一つの世界を発展させるゲームに参加してる仲間だって意識が強くてね。

 それぞれ得手不得手を補い合いながら、それぞれの文明を花開かせることができてね。

 

 ……あれ、なんで涙出てるんだろ、わたい。

 

 霊宝族の人たちの間には、ちょっと伝わってるかな?

 この時代のことを「黄金時代」って言うんだよね。

 混血も進んでね。

 種族間差別なんて、意味ないものになるのはすぐだった。

 うん、まあ、察してるかも知れないけれど、「神聖六種族」って、混血も前提で設定した種族なんだよね。

 大体肉体のサイズも同じようなものだし、生殖周りに無理が出る設定は、わたいが許可しなかったんだよ。

 

 あの頃はよかったよ。

 ばっちゃの繰り言じみるけど、みんな仲良くて、前向きでさ。

 もちろん、全く問題が存在しなかった訳じゃないんだけど、それより「いいこと」の方がずっと大きかった。

 

 でもね、だんだん、ひずみが出て来たのね。

 

 霊宝族系以外の種族に生まれ付いた人たちが、霊宝族系の人たちの努力の結果に「甘えて寄生する」ようになっていったの。

 

 メタなこと言うと、PL(プレイヤー)である六大神のうち、オルストゥーラちゅわんを除く五柱の神が、面倒事はオルストゥーラちゅわんに押し付けるようになっていったのね。

 自分たちは楽していい結果だけ手にしたいからって。

 

 PC(プレイヤーキャラクター)レベルだと、霊宝族系の人たちを、それ以外の系統の人たちが便利屋扱いするようになっていったのね。

「額に石を持つ連中なんて、本当に石だ。無機物が元になっているから下等なんだ。最初から高等な生き物として生まれた自分たちが、どう扱おうといいんだ!!」

 って、大真面目に議論し始める者まで出る始末。

 

 ……意外だと思うけど。

 最初に種族間差別を始めたのは霊宝族じゃなくてね。

 彼らに甘えて堕落した他の種族だったんだよ。

 霊宝族はチート能力があるのに、被差別側だった訳よ。

 

 でも。

 こんなことを実行すれば、どうなるかは分かるよね。

 

 そう、霊宝族が、キレた。

 

 魔力を盾に反乱を起こして、他の種族から文明を取り上げ、差別被差別を逆転させた訳。

 

 霊宝族系にそっぽを向かれた多種族は、あれよという間に没落。

 

 で、以降はみんなにもおなじみの、霊宝族系だけが繁栄を手にして、他の種族は奴隷みたいな立場でそのおこぼれをもらうっていう、屈辱的な生活。

 案の定っていうか、この状態は安定して長く続いた。

 そらそうだよね。

 能力値の面から見ても、霊宝族系が有利なんだから、気合い入れて差別しようとしたら、その状態を維持するのなんて容易いんだよね。

 

 みんなの元の世界でも、能力値にそんなに大層な差がある訳でない人間同士に差別があって、長年それが固定するってことはあったでしょ?

 制度として固定されたらひっくり返しづらいっていうことなんだけど、制度の上に、更にチートな魔力なんてもので差別を固定化してしまったこの世界は、それこそ阿鼻叫喚だったよ。

 

 ま、その状態では、オルストゥーラちゅわん自身は良くても、他の五柱の神々に不満は募るわな。

 元はと言えば、自分たちが蒔いたタネなんだけど、ま、そこは都合よく棚に上げた訳ですわ。

 

「差別するなんて酷い、ちゃんと昔みたいに遊ぼうぜっ仲間だろ俺たち☆」

「搾取に差別までかましてくるクズと仲間になった覚えなんかありません」

 

 秒殺!!

 

 ……かくして、どうしようもない状態は長く続いた訳ヨネ。

 オルストゥーラちゅわんは、他の種族そっちのけで、魔導科学技術を霊宝族(PC)に研鑽させることにハマッていて、恨み言を垂れ流す他の神のことなんか、忘れていったのね。

 

 ま、あの頃は酷かった。

 オルストゥーラちゅわんに対して、脅したりすかしたり、それでも駄目なら、歯の浮くようなおべっか使って、何とか態度を翻させようとしてね。

 

 特に見ものだったのが、自分はモテている、人気があると思い込んでいるチャラ男神……じゃなかった、アーティニフルの自爆っぷりだったにゅう。

 

「なあ、俺たち、もう一度……」

「あ、ピリエミニエ様(GM)、新しい宇宙港を建設します。人間族が2700人ほど犠牲になりましたが、問題ないですよね」

 

 爆殺!!

 

 ……いや、まあ、まずいと思ってたにゅう。

 でもなー、止めるに止められないっていうか、TRPGのルール的にナー。

 

 でもまあ、後はご存知な流れだにゅう。

 

 オルストゥーラちゅわんに深い恨みを抱いていた傷つけるチャラ男、他の四柱の神と組んで、オルストゥーラちゅわんと霊宝族をハメて、戦争に持ち込んだにゅう。

 

 ……で、世界は今みたいになったんだにゅう。

 

 結局、霊宝族から奪った文明は機能せず、地上種族となった五種族は、衰退の坂を転げ落ちることになったケドナー。

 

 んで、負けて地上の覇権を失ったはずの霊宝族系の人たちは、あらかじめ用意していた天空群島メイダルで相変わらず楽園暮らし。

 

「ちくしょぉぉおおおおぉおぉおぉっ!!」

 

 って、誰かさんの絶叫が、耳に甦るにゅう……。

 

 ……いや、待て。

 まずいとは思ったにゅう。

 なんとかしなきゃならないって、わたいは考えてたにゅう、流石にわたいにしても地獄だにゅう……。

 

 で、そんな時に転機がきたにゅう。

 

 近くにあった、全く別の世界が、もう一つの別の世界と衝突しちゃって、消滅することになったんだにゅう。

 

 ……で。

 消滅した世界から拾い上げたのが、おまいら六英雄の魂だにゅう。

 

「この魂を使って、世界を修復するミッションをしよう。もうこのままでは、皆がゲームを投げ出してしまう」

 

 って、珍しくわたいはシリアスに決めたにゅう。

 

 この六つの魂に、世界の行く末を委ねる。

 彼らが上手くやったら、その六大神(PL)も、過去の遺恨は水に流して、もう一度世界を発展させるゲーム仲間として再出発しよう。

 もう一度、仲間になろう。

 このゲームでは、全員が勝者か、全員が敗者か、どちらかしか有り得ないのだから。

 

 そうして、滅びた世界から選ばれた英雄の魂が、おまいらなんだにゅう。

 あんだすたんど?