2 スタイルは派手に行け

「あなたはグラマーなスタイルの美人なのに、体のラインを隠した地味な服が多すぎるわ。日本から持ってきたやつは基本的に全部捨ててね。あなたみたいなタイプは、地味にしていた方が、余計に悪目立ちするから、思い切って派手にした方がいいのよ」

 

 そういえばダイモンにも言われた気がする忠告を、ムーンベルにも繰り返された。

 そして、D9が連れてこられたのが、街の高級ブティックだ。

 

「体のラインを見せるドレスに……ああ、このスタッズ付きのデニムも似合いそうね。オーガンジー袖付きのチューブトップも必要だわね。ああ、それと……」

 

 見る間に、日本にいたころだったら、自由になる金数年分の金額が、まるでセレブみたいな衣装に費やされていく。

 契約金で極めて懐の温かい今では、金の心配はまるでないのだが、正直目が回りそうな気分がするのが、貧乏性なところか。

 

 いけない、いけない。

 こんなことでは、余計に周囲に不審を抱かれてしまう。

「そこそこ裕福なファッションクラスタ」の華やかな顔を、表向き見せなければならないのだ。

「そもそもが派手な人」になれば、実際派手でも世間は「そういう人」と見るだけで、自然に社会に溶け込めるのだ。

 

 自分のように、「神」クラスの高位の神魔になると、見た目だけでなく、何となく人を惹きつける、一種のカリスマ性が放射されるのだという。

 それを隠すためにも、身なりを派手にしないといけないのだ。

 

「木を隠すなら森って言うでしょう? それと同じように、宝石を隠すなら宝石箱なのが道理なのよ」

 

 きっぱりムーンベルに断言されて、D9は更に重なる衣装の山に唸った。

 

 

【神魔の掟2】スタイルは派手に行け