「あ!! ムーンベル!!」
「仕方ないわね、行くわよ!!」
上空を、巨大な翼を持つ「何か」が数体、飛び交っていた。
ばかでかい、蛾にそっくりなバケモノ。
慣れたものなら、それがいわゆる「モスマン」と呼ばれる神魔であろうということがわかる。
首都にほど近いこんな場所にも、こうした性質の良くない神魔は現れる。
ただし、まさか戦闘機に迎撃を指示するわけにはいかない。
山ほどのブティックの包装紙で包まれた荷物を持った二人が、ぶるりと体を震わせると、荷物が一瞬でどこへともなく消え去り、後には満月色にきらめく妖精と、虹色の九頭龍の巨体が現れた。
モスマンがチキチキと耳障りに鳴きながら、眼下に歩いている親子連れめがけ急降下を……
が、はるか上空でそれは食い止められる。
九つある龍の首が、モスマンをがっちり捕らえていた。
解毒しようのない神毒をたたえた牙が、その毛に覆われた膨れ上がった体に食い込むと、モスマンたちは声もなく絶命した。
「あーらよっと」
モスマンの死骸を一瞬空中で放り出し、口から迸る光のブレスで、D9はその死骸を消滅させていった。
「ムーンベル。モスマンの死骸、ペンタゴンに持って帰らなくていいよね?」
「こいつらのサンプルなら腐るほどあるからね。いいわよ、全部消して」
さっくり断言されて、D9は最後の一つを消した。
【神魔の掟3】獲物は逃がすな